バットマン アーカムアサイラム

2009年のGame of the Yearに必ずと言っていいほど
ノミネートされている作品の一つがこの
バットマン アーカムアサイラム」だ。


日米を問わず、キャラクターゲームと言えば
つまらないゲームの代名詞であった時期もある。
版権の使用料による予算の圧迫や版元による様々な制限、
内容がつまらなくてもある程度は売れてしまうという
市場などがキャラクターゲームの発展を阻害していたと
言ってもいいだろう。


しかし、ユーザーが望むのはあくまで、
そのキャラクターを使った最高のゲームであり、
ゲームの面白さと原作の再現度はどちらも高くなければ
本当の満足は得られない。


その点で、バットマンというヒーローは非常に
ゲームにしやすかったと言えるだろう。


もし主人公がスーパーマンだったら、
あらゆる建造物を破壊し、光速で地球上を飛び回らなければ
納得できない。


強くてなんでも出来るというのは聞いただけだと
面白そうな気がするが、ゲームというのは
与えられた障害を一つ一つ取り除いていくことで
継続的な楽しみを提供するので、作りにくい。
移動能力が高すぎるとステージを作るのもたいへんだ。


だが、バットマンは超能力者ではない。
優れた頭脳と精神力、運動能力と体力を持ち、
鍛え上げられた肉体とあらゆる武術のスキルを持った
人間に過ぎない。
犯罪者を殺すのではなく、あくまで逮捕するのが
目的なので相手を殺すこともできず、銃は使わない。


バットマンのスーツは多少の銃弾を防いでくれるが
マシンガンで撃たれればものの数秒で死んでしまう。


この制限がゲームを面白くする。
プレイヤーはバットマンに成り切り、
素手の敵の集団に飛び込んでまずは一人を不意打ちで倒す。
次々襲いかかってくる相手にうまく立ち回り、
倒していくのは非常に爽快だ。


銃を持った敵が相手なら、バットマンは慎重に行動する。
敵を倒しては身を隠し、おびえて集まる敵の注意を
あらゆる手段で分散させ、上から物陰から不意打ちで
片付けていく。


姿の見えないバットマンの影に怯え、
互いに背中合わせに行動し、物音に驚いて
銃を乱射する敵の行動は実に人間的だ。


ワイヤーやバットラングなどの様々なアイテムは
発想次第で様々な攻略を可能とし、
反射神経だけでなく戦術的な楽しみも提供してくれる。


おまけに広大なアーカム島には、バットマンの宿敵
リドラーの仕掛けた様々なクイズが散りばめられており、
頭脳的な楽しみも提供してくれる。


ゲームの魅力だけでも、キャラクターの魅力だけでもなく、
両者が結びついてよりレベルの高い遊びに昇華されているのが
よくわかる。
アーカムアサイラムはゲームの今後の一つの方向性を
示しているだろう。


現在、どれほど面白いゲームメカニクスを持っていても、
その内容が「誰がどこで何と戦うか」というわかりやすい
テーマに根ざしていないと売ることは難しい。
だが、すでに存在するキャラクターはそこを
いとも簡単に解決する。


ここ数年、映画産業とゲーム業界の結びつきは
より強固なものになりつつある。
映画会社が自社コンテンツのゲーム化のために
良いデベロッパを探し、デベロッパは自社の良質な
ゲームシステムを映画会社に売り込んでいく、
そんな図式が成立していくように思える。

バットマン アーカム・アサイラム - Xbox360

バットマン アーカム・アサイラム - Xbox360

バットマン アーカム・アサイラム - PS3

バットマン アーカム・アサイラム - PS3


さて、最後に細かいゲームシステム的なメモ。


バットマンは1vs1の戦いではかなり強い。
3連撃を食らわせると相手は確実にダウンし、
ダウンした相手は止めを刺す事で確実に倒す事ができる。
ただし、この行動には少し時間がかかるため、
相手が2人以上いると妨害されてしまう。
これによって、自分は強いが敵を1人ずつ倒した方が
有利という状況が自然に発生する。


また、格闘においては防御がない。
避ける、先に殴る、カウンター、目くらましという
4つの選択肢がある。
アサシンクリードではカウンターが最強と
なってしまっているが、バットマンのカウンターには
ほとんどダメージがない。また、カウンターの途中で
他の敵に殴られてしまうことがあるので、
カウンター途中でも油断はできない。


このように、常に緊張を強いる戦いを作っているが、
基本的には敵が一人ずつ襲ってくるよう調整されているので
十分対処はできる。
どちらかと言えばライトユーザー向けの戦闘システムだが、
うまければまったく途切れる事なく次々と攻撃をつなげ、
どんどんコンボを稼ぎ、コンボを稼いだ事で敵を一撃で
倒すことのできる特殊な技などを使う事ができるため、
上級ユーザーも満足できるだろう。
コンボを稼ぐと経験値も多く入り、それによって
装備をアップグレードできる。
ついでに体力も回復する。


前述したリドラーのクイズでも経験値取得と体力回復が
できるため、下手なユーザーのフォローも抜かりない。


銃を持った敵に対して奇襲を仕掛けるモードでも、
最初は敵がバラバラに行動しており、
一人を倒すと集まってくるため、
倒したらすぐに移動するか隠れるかしなければならない。
その後も、敵が2人か3人一組になるため、
彼らを分散するために罠をしかけなければならない、
地形を利用すれば固まった3人をまとめて倒す事が
できるなど、同じことの繰り返しにならないよう
様々な工夫が凝らされている。


と、長々書いてきたものの、どれだけ記述しても
このゲームの魅力が十分に伝わるとはなかなか思えない。
XBOX360Playstation3、PCとそれぞれで発売されているので、
バットマンを知らなくてもなんらかのハードを持っている人は
是非プレイして欲しい。