Fable2で人生の痛みを体験する

海外RPGと言えば、ここ数年話題になるのはMass Effect
Oblivion、Fallout3、Dragon Ageなど。
遥かに広がるフィールド、膨大な数の人々、自由な展開、
今思えばロマンシング・サガを作った人々が目指していたのは
まさにこういうものなんだろうと思う。


昨今、JRPGがダメだという意見はよく聞かれるが、
明らかにビジョンを持った人々もいるし、FFXIIなどを見ている
限りでは技術などもあるので、日本のRPGの将来性については
実のところあまり悲観していない。
海外RPGだって今の形に落ち着くまでには数限り無い失敗作を
生み出している事も併記しておく。


さて、上記いろいろなゲームを挙げて来たが、
海外RPGというのはやはり日本人にとってはクセがあるため、
日本のRPGが好きなユーザーには手放しで勧めにくい。
それを乗り越えてでも、やって見て欲しいと私が思うのは
ポピュラス」「ダンジョンキーパー」「ブラック&ホワイト」などを
デザインしたピーター・モリニューの「Fable2」だ。


「Fable2」は「ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス」を思わせるような
グラフィックの、ややオールドテイストなスタイルを持つ
アクションRPGである。
動きはややもっさりしているし、インターフェイスは使いにくい。
ついでに、バグが散見されるところもいただけない。
しかし、それでもやる価値はある。


姉と二人暮らしの主人公は些細なきっかけで姉を殺され、
自分が世界の命運を握る英雄の末裔であると知って
その責務を果たすために自分の人生を差し出す事になる。


この「人生を差し出す」というのは、比喩ではなく、
物語の中で主人公はどんどん歳を取っていく、
結婚もするし子供もできる。
主人公の活躍や振る舞いによって
年月と共に街の様子なども変わっていき、
ごく普通の少年であった主人公は、やがて様々な人々から感謝され、
名声を得て英雄となっていく。


主人公は選ばれた英雄なので、決して死ぬことはないが、
致命傷を受けたら身体に傷ができ、決して消える事はない。
この世界にはいわゆる魔法使いがいないため、
魔法を使うと人々から驚かれ、恐れられるうえに
その便利な魔法を使えば使うほど身体には魔法の
文様が刻まれてやや不気味な外見になっていく。


この後戻り出来ないという変化が、このゲームの何よりの恐ろしさ。
選択の重みにつながっていくのだ。
世界の命運に関わる英雄としてシナリオを進めていく過程で、
主人公は何度も選択を迫られる事になる。
正しいと思える選択には常に何らかの犠牲がつき、
非常に辛い想いをする。


普通のRPGだったら、シナリオ上の選択肢では
そんなには悩まない。
主人公はシナリオを進めるために存在しているのだから。
もちろん、選択はユーザーに取って辛いものかも知れないが、
正しい事なのだから仕方がない。


だが、「Fable2」で主人公が払う代償というのは、
単にシナリオ上の悲惨な出来事ではない。
詳しくは大きなネタバレになってしまうので書かないが、
日常生活を過ごしている感の強い「Fable2」で、
決断をする度に時間が経過し、歳を取っていくというのは、
自分が世の中からより残されて、得られるはずだった
様々なものを失った感覚というのが非常に強い。
これは、年少のユーザーではなかなか味わえないかも知れない。
大人になってからドラクエ5をプレイすると、
感動が深くなる、というのに少し似ているが、
そこをもっと突き詰めたものと言ってもいいだろう。


「Fable2」を一言で説明するなら、
「取り返しがつかない」感覚を味わうゲームである。
グラフィックがすごい、世界が広い、いろんな事が起こる……
そういう要素も近年においては非常に大切だが、
この「Fable2」と同じ体験ができるゲームは一つもない。

ちなみに私自身は最後の最後、
すべての人々を救う決断ができなかった。


選択の重み、人生の重み、のしかかるそれらに耐えながら
最大多数の幸福を追求できるプレイヤーは果たして
どれだけいるのだろうか?


もし「Fable2」をプレイして、最後の最後で
その決断が出来た人がいたら、是非教えて欲しい。